「リベルサスは肥満に効くのか」「マンジャロとどっちを選べばいいのか」で止まっていませんか。
先に、いちばん大事なところから答えます。リベルサスは、日本では肥満症の治療薬として承認されていません。承認されている効能・効果は2型糖尿病です。
この記事では、①肥満症の薬として承認されているのはどれか ②リベルサスとマンジャロは作用の仕組みが何が違うのか ③臨床試験の減量幅の正しい読み方 ④用量ごとの料金を、看護師の視点で整理します。
そして多くの記事が見落としている、「リベルサスの臨床試験データ」に関する重大な誤解にも触れます。ここを知らずに選ぶと、期待値を大きく間違えます。
リベルサスは肥満症の治療薬として承認されていない
ここを最初に整理します。同じ「セマグルチド」という成分でも、製品によって承認されている病気が違います。
| 製品名 | 投与方法 | 国内で承認されている効能・効果 |
|---|---|---|
| リベルサス錠 | 1日1回の内服 | 2型糖尿病 |
| オゼンピック皮下注 | 週1回の注射 | 2型糖尿病 |
| ウゴービ皮下注 | 週1回の注射 | 肥満症(条件あり) |
厚生労働省の最適使用推進ガイドラインでも、セマグルチドを含む週1回皮下投与製剤(オゼンピック)と1日1回経口投与製剤(リベルサス錠)は2型糖尿病の治療薬として市販されていると明記されています。
つまり「リベルサスで肥満症の治療をする」という使い方は、承認された範囲の外にあたります。ダイエット目的で処方を受ける場合は、保険が使えない自由診療になります。
肥満症で承認されているウゴービは、誰でも使えるわけではない
では肥満症で承認されているウゴービなら保険で使えるのかというと、対象がかなり絞られています。
承認されている条件は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを持っていて、食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない場合で、さらに次のどちらかに当てはまることとされています。
- BMIが27以上で、肥満に関連する健康障害を2つ以上持っている
- BMIが35以上
ウゴービは肥満症以外の使用は適応外にあたるとされ、用量も0.25mgから始めて4週間隔で0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgと段階的に上げていく設計です。
この条件に当てはまらない人にとっては、保険で肥満症の薬を使う道は今のところありません。「体重を減らしたい」という理由で受けられる治療は、自由診療の枠になります。この記事で扱うリベルサスとマンジャロも、その枠の話です。
リベルサスとマンジャロの違いを一覧で整理
| 項目 | リベルサス | マンジャロ |
|---|---|---|
| 成分名 | セマグルチド | チルゼパチド |
| 作用する受容体 | GLP-1受容体 | GLP-1受容体 + GIP受容体 |
| 投与方法 | 飲み薬(錠剤) | 皮下注射 |
| 投与間隔 | 1日1回 | 週1回 |
| 飲み方の制約 | 起床時・空腹時に少量の水で服用し、その後30分以上飲食しない | 食事のタイミングと無関係 |
| 国内での承認 | 2型糖尿病 | 2型糖尿病 |
どちらも本来は2型糖尿病の治療薬として承認された医薬品です。ダイエット目的での使用は、承認された効能・効果の範囲外(適応外使用)にあたり、保険適用外の自由診療となります。
【看護師が解説】GLP-1単独と、GIPを併せ持つ薬は何が違うのか
ここが本記事の核心です。ネット上の比較記事の多くは「マンジャロの方が強い」で終わっていますが、なぜ違うのかを説明できていません。順を追って整理します。
GLP-1とGIP──2つのインクレチン
食事をとると、消化管からインクレチンと呼ばれるホルモンが分泌されます。代表的なものが2つ。
- GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1):主に小腸下部から分泌。インスリン分泌を促し、グルカゴンを抑え、胃排出を遅らせ、脳の視床下部に働いて食欲を抑えます
- GIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド):主に小腸上部から分泌。こちらもインスリン分泌を促します
リベルサス(セマグルチド)は、GLP-1受容体だけに作用します。
マンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用します。この「2つの受容体に同時に働く」という設計が、チルゼパチドの特徴です。
なぜGIPが加わると違いが出るのか
GIPの働きは、単にインスリンを出させるだけではありません。脂肪組織でのエネルギーの取り込み・代謝や、脳の食欲調節に関わることが報告されています。
興味深いことに、GIPは長らく「肥満を促進する側のホルモン」と考えられていました。ところが受容体に持続的に作用させると、逆に体重を減らす方向に働く可能性が示され、GLP-1との併用でその作用が増強されるという知見が積み上がってきました。
つまり、チルゼパチドは食欲抑制のルートを2本持っているということです。作用点が増えれば、体重に対する影響も大きくなりやすい。これが薬理学的な背景です。
「注射だから効く」わけではない
誤解されがちですが、注射だから効くのではありません。投与経路(飲む/打つ)と、作用の仕組み(受容体)は別の話です。ここを混同すると選択を誤ります。
臨床試験で報告されている減量幅
ここで数字を見ていきますが、読み方に注意が必要です。
直接比較した試験(SURMOUNT-5)
2025年にNEJM誌で報告されたSURMOUNT-5試験は、セマグルチド2.4mgとチルゼパチドを直接比較したものです。72週の時点で、チルゼパチド群の体重減少率が約20%、セマグルチド群が約14%と、チルゼパチド群で有意に大きい減量が報告されました。
ここが重要──「セマグルチド2.4mg」はリベルサスではない
この試験で使われたセマグルチドは、週1回の皮下注射(2.4mg)です。リベルサスの錠剤ではありません。
セマグルチド2.4mgの皮下注射は、日本ではウゴービとして肥満症の適応で承認されている用量・投与経路です。一方リベルサスは経口のセマグルチドで、承認されている用量は3mg・7mg・14mg。投与経路も用量設定もまったく異なります。
ところが、ネット上の比較記事では「セマグルチド=リベルサス」として、注射の試験データをそのままリベルサスの効果として紹介しているケースが少なくありません。これは正しくありません。リベルサスに、注射薬と同じ減量幅を期待するのは、根拠のない期待です。
薬を選ぶときは、「その数字は、どの薬の、どの用量の、どの投与経路の試験なのか」を必ず確認してください。ここを見ないと、話が噛み合いません。
数字の扱いについて
上記はいずれも臨床試験における平均値であり、生活習慣への介入と併用した条件下での結果です。効果には大きな個人差があり、すべての人に同じ結果が得られることを保証するものではありません。
副作用の出方はどう違うか
両剤とも、報告されている副作用の傾向は共通しています。
- 主な副作用:吐き気、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部不快感、食欲不振など、消化器症状が中心
- 重大な副作用:急性膵炎、胆のう炎、胆管炎、低血糖(他の糖尿病薬との併用時など)
消化器症状は、胃排出が遅れることに伴って現れやすく、投与開始時や増量した直後に出やすいのが一般的な傾向です。多くは継続とともに軽減していきますが、症状が強い場合は自己判断で我慢せず、必ず医師に相談してください。
なお、どちらの薬でも、減量に伴って筋肉(除脂肪量)も減少することが試験で報告されています。たんぱく質の摂取と筋力トレーニングを並行することの重要性は、両剤に共通します。
それぞれ、どんな人に向いているか
リベルサスが検討されやすいケース
- 注射への抵抗感が強い
- まずは内服から始めたい
- 服用のタイミング(起床時・空腹時・30分の待機)を守る生活リズムがある
マンジャロが検討されやすいケース
- 週1回の投与で管理したい
- 毎日の服薬タイミングを守るのが難しい
- 注射への抵抗感が少ない
なお、注射への不安は「実際にどう打つのか」を知ると小さくなることがあります。マンジャロの注射器は針が本体に固定された1回使い切りのキットで、自分で針を刺す動作はありません。具体的な手順や、痛みを減らす方法、使用済みの注射器の捨て方はマンジャロの打ち方|痛みの減らし方と針の捨て方で解説しています。
ただし、これらはあくまで生活スタイル上の目安です。実際には、既往歴・併用薬・BMI・血糖値の状態などを踏まえて、使用できる薬なのかどうかを含めて医師が判断します。「効果が大きいと聞いたから」という理由だけで選べるものではありません。
料金はどちらが安いのか|条件を揃えて比べる
「飲み薬のほうが安い」と思われがちですが、条件を揃えて並べると、その前提は途中で崩れます。
両方を扱っているオンライン診療のActually,(アクチュアリー)の料金を、同じ定期便の期間で並べてみます。
| 薬剤・用量 | 1ヶ月ごと定期便 | 6ヶ月ごと定期便 |
|---|---|---|
| リベルサス 3mg(開始時の用量) | 7,930円 | 7,630円 |
| リベルサス 7mg(続ける用量) | 15,930円 | 13,930円 |
| マンジャロ 2.5mg(開始時の用量) | 11,980円 | 9,980円 |
| マンジャロ 5mg(増量後の用量) | 22,280円 | 18,680円 |
※すべて税込。別途送料550円/回。初診料は無料、再診を希望する場合は再診料1,500円/回。リベルサスの価格は2026年7月30日、マンジャロの価格は2026年8月1日に公式サイトで確認したものです。用量・定期便の期間によって金額が変わるため、最新の料金は公式サイトでご確認ください。処方の可否は診察のうえ医師が判断します。
ここは注意して見てください。リベルサスは公式サイトで「3mgから開始し、4週間後に7mgへ増量することが推奨されている」と案内されています。つまり7,930円は最初の1ヶ月に使う用量の価格です。
そして続ける段階の7mgと、マンジャロの2.5mgを同じ6ヶ月定期で比べると、月あたり3,950円、注射のほうが安くなります。
ただしここで終わらせると片手落ちです。マンジャロの2.5mgも開始時の用量で、添付文書では4週間投与した後に5mgへ増量することとされています。5mgになると18,680円となり、今度はリベルサスの7mgより高くなります。
つまりどちらが安いかは「どの段階を見るか」で入れ替わります。入口の価格だけを比べても、最大量だけを比べても、判断を誤ります。
→ マンジャロの用量ごと・契約期間ごとの全プランと、薬代以外にかかる費用はマンジャロの料金は月いくら?用量で変わる総額で表にまとめています。
→ リベルサスの用量ごと・期間ごとの全プランと、公式の飲み方どおりに続けた場合の総額はリベルサスのダイエット料金|3mgと7mgで総額はどう変わるで整理しています。
→ マンジャロの用量と副作用の仕組みはマンジャロの効果と副作用|看護師が仕組みを解説へ。
→ 打ち方・保管・使用済みの注射器の処分はマンジャロの打ち方|痛みの減らし方と針の捨て方へ。
※まずは無料のチャット相談・診察で、自分に適応があるかを確認するのが確実です(予約はLINEから)。
共通して必ず守ってほしいこと
厚生労働省は、GLP-1受容体作動薬の適応外使用について、健康被害のリスクがあることから安易な使用を控えるよう注意喚起を行っています。
特に、個人輸入や海外通販で入手した製品は避けてください。偽造品が流通しているリスクがあり、成分量も保管状態も不明です。医師の診察もなく、副作用が起きたときのフォローもありません。
また、ダイエット目的での使用は自由診療となり、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。重い副作用が生じた場合の公的な救済が受けられない点は、必ず理解しておいてください。
よくある質問
リベルサスは肥満症で保険が使えますか?
使えません。リベルサスの承認されている効能・効果は2型糖尿病です。体重を減らす目的で使う場合は自由診療(全額自己負担)になり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
肥満症で保険が使える薬はないのですか?
セマグルチドの製剤では、ウゴービが肥満症の適応で承認されています。ただし対象は、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかを持ち、食事療法と運動療法で十分な効果が得られず、BMIが27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上持つ場合、またはBMIが35以上の場合などに限られます。当てはまるかどうかは医師の判断になります。
結局、マンジャロの方が痩せるということですか?
直接比較試験では、チルゼパチド群の方が大きい減量が報告されています。ただしこれは平均値であり個人差があります。また、あなたにその薬が適応となるかは別問題です。減量幅だけで選ぶものではありません。
料金はどちらが安いですか?
段階によって入れ替わります。リベルサス7mg(6ヶ月定期13,930円)とマンジャロ2.5mg(同9,980円)ではマンジャロのほうが月3,950円安くなりますが、マンジャロが5mgに増量されると18,680円となり逆転します。開始時の価格だけで比べないことをおすすめします。
リベルサスからマンジャロに切り替えられますか?
切り替えの可否・タイミングは医師の判断です。自己判断で併用したり、勝手に切り替えたりしないでください。
飲み薬と注射、どちらが安全ですか?
投与経路の違いが安全性の優劣を意味するわけではありません。副作用の傾向は両剤で共通しています。
注射は自分で打つのですか?痛くないですか?
マンジャロは週1回の自己注射です。針が本体に固定された使い切りのキットで、針を刺す動作はありません。打つ前に冷蔵庫から15〜30分出して室温に戻しておくと、温度差による刺激が減らせます。詳しくはマンジャロの打ち方をご覧ください。
吐き気が出たらやめるべきですか?
自己判断で中止せず、医師に相談してください。用量調整で対応できる場合もあれば、中止が適切な場合もあります。
やめたら体重は戻りますか?
臨床試験では、いずれの薬でも中止後に体重が再増加する傾向が報告されています。詳しくは下記の記事で解説しています。
まとめ
リベルサスは、日本では肥満症の治療薬として承認されていません。承認されているのは2型糖尿病で、体重を減らす目的で使う場合は自由診療になります。
リベルサスとマンジャロの違いは、「GLP-1受容体だけに作用するか、GIP受容体にも作用するか」という、作用の仕組みそのものにあります。投与経路(飲む/打つ)の違いは、その次の話です。
臨床試験ではチルゼパチドの方が大きい減量が報告されていますが、数字を見るときは「どの薬の、どの用量の、どの投与経路の試験なのか」を必ず確認してください。特に、注射のセマグルチド2.4mgのデータを、経口のリベルサスの効果として読むのは誤りです。
料金についても同じで、入口の価格ではなく、続ける用量の価格で比べる。そうすると、飲み薬と注射の順番が入れ替わる段階があります。
そして最後に。どちらの薬も、自分に使えるかどうかは医師が判断します。まずは診察を受けて、適応があるかを確認するところから始めてください。
まずは無料相談・カウンセリングで、自分に適応があるかを確認するのが確実です。
※効果には個人差があります。/最新の料金・キャンペーン内容は各医療機関の公式サイトをご確認ください。/本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、診断・治療を目的とするものではありません。薬剤の選択に関する判断は必ず医師にご相談ください。/リベルサス・マンジャロはいずれも2型糖尿病治療薬として承認された医療用医薬品です。ダイエット目的での使用は保険適用外の自由診療となり、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。
参考文献:Jastreboff AM, et al. N Engl J Med. 2022(SURMOUNT-1)/Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021(STEP-1)/Aronne LJ, et al. N Engl J Med. 2025(SURMOUNT-5)/厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ウゴービ皮下注)」/厚生労働省「GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する注意喚起」
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